「でもな、信洋。その仮説は正しくねぇ」

「っえ?」

今の話にどこかおかしい点などあっただろうか。

自分の記憶を辿っていると、平沢さんは急に膝をつき、雪を払う。雪が退かれたそこは、僅かに小さく地面に穴があったような痕跡があった。

「琴音は若の“真後ろにいた”。今の仮説はそれが前提になってんだろ」

「そうですね。…でも、それが何を」

そう言いかけて気付く。ここちゃんを襲った銃弾は、全て貫通していたという事実に。

「琴音が本当に若の真後ろにいたなら、若もまた銃弾による傷を負っているはずだ」

「でも、若は銃弾を浴びていない」

「それに、琴音が若の背後にいたなら、倒れたとき琴音の体は若に当たっているはず」

「でも、ここちゃんは地面に倒れた」

ピースがはまっていく。

今までの違和感が少しずつ消えていく。事実に近づいていく。

やはり、敵の本当の目的は…。