振り返らないまま固まっていると、舌打ちと共にお腹に手が回る。そのまま引き上げられるように立つと、がっちりと肩に腕を回された。

「琴音、分かってんだろうな」

「…コク」

声にまで怒気が込められているような気がする。

まともに季龍さんの顔を見ないままなんとか頷くと、そのまま部屋から出され、どこかに連れていかれる。

たどり着いたのは季龍さんの部屋で、乱暴に開け放たれたドアに驚く間も無く、気づいたときにはベッドに倒れ込んでいた。

起き上がろうとついた手は跳ねられ、再びベッドに沈む。その頃には季龍さんにベッドに押し付けられている状態で、身動き1つ取れなかった。

見下ろしてくる季龍さんは表情が静かなのに、その目は怒っているとはっきり分かる。

逸らそうとしても逸らせない視線に、嫌な汗が背中を撫でたような気がした。

「琴音、なんで言いつけを破った」

「…ご、めんなさい……」

「2度と口を交わすな。分かったか」

「はい…」

逆らうことなんかできない。…したら殺される。