でも、敵意が消えたのは本当にその一瞬で、すぐにまた憎しみにも似た感情に覆われてしまう。
「…で？人身売買にかけられても、買われた先で不自由なく暮らしてるあんたが幸運だって言いたいわけ？」
「…」
「ほんとにムカつく。ろくに苦労したことないような顔して、さぞ愛されて育ったんでしょうね。見せつけてるわけ？私に復讐のつもり？」
「違う」
「違わない。あんたがしてることは、私に自分の惨めさを思い知らせてんの。…こんな立場じゃなかったら殴ってやったのに」
「高崎さん」
「ほんとにどっか行きなさいよ！！分かんない！？あんた見てるとイライラすんのよ！二度と話しかけて…」
「聞いてよ！！」
自分でも驚くくらい声が出る。高崎さんも驚いたのか言葉を失うぐらいに。
心を落ち着かせる。感情的な言葉はケンカになるだけだ。
深呼吸をして顔をあげ、高崎さんを見つめた。
