浩介と別れると、まっすぐ家へと道を急いだ。
 そのまま、家の中に入ると、短くため息を吐いた。

 今日は、彼に何かを聞くことができなかった。

 聞いても嘘で帰ってくるとわかっていたからかもしれない。

 今日、浩介は家に帰ってどうするんだろう。

 そう思ったとき、電話が鳴った。

 知らない番号だ。
 不審に思いつつ、電話を取った。

 あたしが返事をする前に、女の声が聞こえてきた。

「やだ。お母さんが帰ってきたらどうするの? 彼女と顔見知りだよね」
「大丈夫だって。実家に妹と一緒に帰っているから、そんなに早くはやくはかえってこないよ。父さんが迎えに行くって言っていたから、三人一緒に帰るはず」

 あたしはそのやり取りに思わず息をのんだ。

 聞こえてきたのは、浩介と綾香の声だったのだ。

「ならいいけど。いつもここであの子としているの?」

「親がいないときはたまに」

「へえ、そういうのもいいね。あの子は何も知らないままなんだ」

 綾香は楽しそうな声をあげた。