チョコレートケーキののったプレートが、あたしと浩介の前に並べられた。

 あたしはケーキをフォークで切り取り、口に運ぶ。

 チョコレートのほのかな苦みと甘みが口の中にほんのりと広がってきた。

「おいしい」

「だろ?」

 浩介は満足げに微笑んだ。

 食べ終わり、あたしたちは席を立った。お会計を済ませようとすると、浩介があたしから請求書を取り上げた。

「今日は俺のおごり」
「ありがとう」

 あたしは素直に好意を受け入れた。
 支払いをすませて、店の外に出た。

 浩介はあたしの手を引き、歩き出した。
 その足が公園の前で止まった。


 浩介の顔が近づいてくるのを感じ、あたしは目を閉じた。

 唇が触れた直後、すぐに彼の舌があたしの口の中に入り込んでくる。

 絡まり合う吐息に自然とあたしの呼吸も乱れてきた。

 浩介の手があたしの体をはうようになぞる。


「ちょっと、こんなところじゃだめだって」
「悪い」

 彼は少し照れたように微笑んだ。

「たまには二人きりになりたいな」
「あたしもだけど、なかなかね」

 あたしの家も浩介の家もともにお母さんは専業主婦で、妹がいる。浩介の家は妹が小さいため、大抵家に誰かいる状態だ。