「―――あ……み、あゆみ、阿弓!」

「……え?」

ハッ。

気が付くと、周りは夏の蝉がうるさい森じゃなく、春の誰もいない教室だった。

もう放課後か。

シャーペンを持ったまま意識がトリップしてた私を、親友の蝶羽と亜希乃が覗き込んでる。

「どしたの、ぼーっとしちゃって?もう帰りのHR終わったよ?」

「ほらこれ。進路希望調査のプリント。来週までに提出だって」

「あ、あぁ、うん、悪ぃ。ちょっと考え事……ごめんごめん、帰ろ」

蝶羽から渡された紙をクリアファイルに突っ込み、私は鞄をひったくるように肩にかけた。

はー。

滅多にぼんやりなんてしないんだけど。

高校三年生になったばっかだってのに、なんで急に小学六年生の時の夢なんか見るんだろ。

これから進路とかの事考えなきゃいけないのに、やばいな……

あーあ、今日はなんか調子悪い。

何かの前兆じゃなけりゃ良いんだけど。