「ん~?それどこ情報?引っ越したのは近所の新しいアパートだし、あたしはアイドル諦めてないよぉ?オーディションに一回落ちただけ。また今度六回目受けるの~」
パッと上げた顔が、昔の記憶と重なる。
何も変わらない、天真爛漫で無邪気な可愛い笑顔。
良かった。私が耳にしてたのは誤情報だったみたいだ。
六回もオーディション受けてるのか……頑張ってるな。
しかし、審査員の目も節穴だな。こんな純粋で混じりっけのない美少女、そうそういないぞ?
「あ、あの、アユさん、私は覚えてる?」
少し離れた場所から心配そうに自分を指さす姫カットの少女が、昔のおかっぱ頭と重なる。
「……ユーリ、だよね?」
三つ下の友人のうちの一人、皇 夕璃(すめらぎ ゆうり)、通称ユーリ。
「良かったぁ!覚えてたんだね!」
ほっと安堵の息を吐く夕璃。
良く見ると、制服が県内一の名門中学のセーラー服だ。
昔から変わらず真面目なようで、少し安心した。
ほっとする間もなく、誰かがいつの間にか後ろに周りデュクシデュクシとつつく。
「おっ、じゃ、私は?私は?」
ストリート系でキャップがトレードマークの子。