「まぁ、ドタキャンとか普通に失礼ですし……」

「ふふっ、理由は何であれ嬉しいわ。さ、入って」

エレベーターから少し歩いた場所に、『TGG』とポップなフォントで書かれた看板が掛かったドアがあった。

「ようこそ、ここがTGGの事務所よ」

「し、失礼します」

中にいるのは旧友達のはずだけど、何となく緊張しながらドアを開けた。


ガチャッ


「あ!アユさんだ~!!」

「うぉっ」

ドアを開けた瞬間、いきなりピンクの塊がみぞおちにドスっと飛び込んできた。

っゔぉぇっ、ごほっ……な、なんだ?

こ、この胃液を吐くくらいの衝撃で突進してくる甘ロリっぽい服のやつといえば……

「ねぇ、覚えてる~?ジュエル・ガーディアンズのピンク担当だった、アサヒだよ!」

小学生時代の三つ下の友人の一人、志川 朝妃(しかわ あさひ)、通称アサヒだ。

昔からケーキ屋に住みたいだの魔法少女になりたいだの王子様と結婚するだの、いかにも女子っぽいメルヘン思考の娘だったけど、今も変わってないようだ。

中でも本気で志してたアイドルになる夢を諦めて、都会に引っ越したって聞いてたんだけど……

「あ、あれ、アサヒ?アイドル諦めて、引越したんじゃ……」