あれだけお喋りなのに、おかしい、気分でも悪いのか、と思っていると……。
「ハーイ、可愛いお二人さーん、これで最後です。向かい合ってぇー」
カメラマンが機嫌良く指示を出す。
言われた通り向き合い、女の顔を改めて見る。
そして、思う。
生き人形……。
百合子の雛人形とソックリなお雛様がそこに居た。
母、曰く。
「美人顔で有名な人形師、八代目雲母の作品よ。本当に綺麗なお顔」
なるほど、こういうのを綺麗というのか、と母の言葉を思い出し妙に納得する。
「ーー恭吾さんは……」
おちょぼ口に紅く塗られた口が、久々に開く。
「どうして何も言ってくれないのですか?」
女の瞳がジワジワ潤み出す。
「おぉー、いいねぇ、その顔、お雛様、最高!」
パシャパシャとシャッター音が鳴り響く。
「私、この姿を誰よりも恭吾さんに見せたかったのに」
「見ている」
「見たら、感想を述べるでしょう、普通は!」
ポロッと涙が一粒溢れる。
ツーッと流れる涙を、腕を伸ばし親指で拭い取る。
「泣くな、まだ撮影は終わっていない。綺麗な顔が崩れる」