ガチャンと扉が開く。
ドアの側に居た僕と君島は、同時にそちらを見、同時にアングリと埴輪になった。

入ってきたのは、竜崎に手を取られたあの女だった。

「ーー神崎さん、メチャ素敵です」

我に返った君島は駆け寄り、女の周りを三百六十度眺め歩く。
だが、僕は固まりいつまでも動けなかった。

「どうよ! 綺麗でしょう」

何故、竜崎が胸を張る!
彼女も付き添い、と称し付いてきた口だ。
バイということだから、もしかしたら、彼女もボディーガードのつもりかもしれない。

「おー、マーベラス! ビューティフル! ファンタスティック!」

カメラマンが近付こうとするのを、君島、竜崎が阻止する。

「撮影、初めて頂けません!」

竜崎が例のメドゥーサの眼でカメラマンを見る。

どうやら、効果絶大のようだ。
マインドコントロールされたみたいに、カメラマンは素直に撮影を開始する。

カメラマンは性格に難ありだが、伊達にプロは気取っていなかった。カメラの腕は確かだった。

だが、ノリに乗ったカメラマンに僕と女は散々翻弄され、おまけに照明が物凄く暑く、終了する頃には、もうクタクタだった。

その間、女は一言も口を利かなかった。