狙われる? 何を?
「さっき、照明のミミちゃんに確かめました。やっぱり、あのケイジってカメラマン、バイだそうです。両刀です」
パイ? そう言えば腹が減った。
「アップルパイが食べたい」
「ちがーう!」
君島に全力否定される。
「パイではなく、バイです。女も男も好き、どちらもイケる口って人です」
そんな話をレズビアンの桔梗から聞いたことがある。
あっ、だが、桔梗はもはやレズビアンではなかった。
この君島と付き合っているのだった。
だが、だったら、桔梗もそのバイではないか?
バラシはしないが、順調にいくと君島と僕は義従兄弟になる。バレて後で文句を言われ、仕事に支障をきたすのも、何だかなぁ、と何となく悶々としていると、「分かっているんですか!」とまた、叱られる。
君の幸せを考えてやっているというのに、上司の心、部下知らずだ。
「全く! 万が一にも、課長が彼に喰われでもしたら、僕、桔梗さんと神崎さんに殺されますから!」
おや? 部下の心、上司知らずだったのか?
どうやら彼がここにきたのは、カメラマンの性癖を知って、僕を守るためだったようだ。