男側の衣装も、幾枚重ね着するのだ、というぐらい何枚もの衣装を重ねられた。
重さもだが、動き辛い。

映画なんかで、公家と言われる人が「麿わぁ〜」なんて、のんびり口調でノロノロ動く姿を、公家を表現する強調だと思っていたが、中々どうして、あれは事実に基づいた真実だったのか、と痛感する。

女の衣装はこれ以上だろう。今頃、地中奥深くに沈んでいるのではないだろうか、とちょっと心配していると、「お内裏様」と呼ばれる。

どうやら、この現場では、矢崎課長は用無しらしい。

案内に従いやってきたのは、ガランとしたスタジオ。
その一角だけが妙に眩しく光り輝いていた。

「あっ、どうもぉ、今日撮影させて頂きますカメラマンのケイジです」

髭を生やしたチャラそうな男が、名刺を渡しながら、何気に僕の手に触れる。
ん? 何だ……。

「嫌ダァ、ケイジさんたら、早くもロックオン?」
「ミミちゃん、シーッ」

ニヤリと笑いながらチラリと流し目で僕を見る。
いったい、何の話だ?

「課長!」

何故か付き添いだ、と付いてきた君島が、いきなり僕の腕を引き、ドアの方に連れて行く。

オイオイ、歩き辛いんだってば!

「危ないです。狙われています」

君島が危機迫る声で言う。