ギャーと叫ぶ僕の悲鳴に、榊部長がチラッとこちらに視線を向ける。
途端に! だった。蜘蛛の子を散らすように皆、席に戻る。あの女以外……。

「恭吾さん、聞きました? バーチャル広報誌『ミカド』のこと」

この女、何故、総務に戻らない。
部長を見ると、意味不明に口角が上がっている。
そうだ、この女、榊部長と仲良しだった。

「お内裏様とお雛様の衣装ですって。十二単です。一度着たかったんですよね、あれ」

ウットリと祈りのポーズで、明後日の方向にトリップする女。

僕は僕で……振袖でも浮いていたのに、十二単! 否、あれは重いと聞く。ボワンと思い浮かんだのは、衣装を纏い、押し潰された女だ。

笑える。

「楽しみですね。撮影は来週末の金曜日だそうです」

もしかしたら、本人の意思は無視? と思っていたら、女が「了解しておきました」と宣う。

何を勝手なことを! と思ったが、この女に反論しても広報に話が付いているなら、今更何を言っても無駄なこと。もう、放置だ。

ーーが、どうやら、これがいけなかったようだ……。
何故僕がこんな目に……。



二日後、仕事中だというのに……どうしてここに僕が居るのだ!
榊部長も部長だ! いつものスイッチは何処へやった。

「恭吾さん、美しい写真のため、頑張りましょう!」
「そうよ、これは業務命令なのよ」

女と竜崎に拉致られるように連れてこられたのは……エステ。

「メンズエステで、ゴミ男の最後の垢を落としてしまいなさい!」

オーホホホホ、と高笑いする竜崎は、まさに魔女。怖っ!