結構小物で、臆病者なんだろうな
資材倉庫の裏から、またバイクの排気音が聞こえ、走り去っていく
終わった…
出口の方を見たまま、私は仁王立ちしている
パシュッ!パシュ!パシュッ!
乾いた音がして、私の体から力が抜ける
私を包んでいた、淡く青白い光も姿を消す
ガックリと膝をつき、両手も床につく
荒い息をつく
…ああ、さっきは…
一体、なんだったんだろう
私に乗り移ったのは、一体誰?
いや、そもそも人間なの?動物なの?
…わからない、何もわからない
でも、何とか助かった
そして、私の頭の中は、台風が過ぎ去った後のように混乱している
とにかく、ここを出よう
うつ向いて、床を見ていた私は、ゆっくりと顔を上げる
起き上がろうとする
目の前に、蒼白い光が見える
…ん?
蒼白い、光?
ゆっくりとその光を見上げる
光はやがて、形を変えていく
人のような、形…
「ひゃあああっ!」
幽霊!
お化け!
疲れているはずなのに、私はピョンと飛び上がり、尻餅をついた
ユウレイダ!
オバケダ!
体が地震の初期微動のように、ガタガタ震えてくる
チンピラたちからレイプされかけた時に感じた恐怖とは別物だ
怖い!逃げなきゃ!
体がガタガタ震えて、動けない!
そいつは…幽霊?は、尻餅をついて動けない私を、無表情に見下ろしている
混乱して、恐怖に支配されている頭の中で、必死に考える
呪文だ!魔物払いの呪文だ!
…何だっけ?あれ…ええと…
『…エロイムエッサイム、我は求め訴えたり…』
ああ、違う!
これは悪魔召喚の呪文だ!
ええと…
『アッラーフ・アクバル…』
これも違う!イスラム教だ!
幽霊は…あわてふためいている私を、相変わらず見下ろしている
逃げられないなら…
呪文も思い浮かべないのなら…
と、と、とりあえず、話しかけてみよう
「ふ、フーアーユー?」
ああ、私って馬鹿…
幽霊に反応なし
落ち着こう、まずは落ち着こう。
ぎこちなく深呼吸、2回。
「あ…あなた、だれ?」
幽霊のような物体に話しかける
「い…とう…さい…」
うわ、しゃべった!
ゆゆゆゆうれいが…しゃべった!
「せっしゃ、は…はりま…いっとうさい…」
なななんか、しししらないけど…
なな名前みたいなことを、いいいってる!
どどどうしよう…
あ、そうか、私がもともと、「あなた、だれ?」って聞いたんだっけ。
「あ、あの、わわ私は…」
「存じておる…宮田…まこと殿…」
ひえええ…!何で知ってるの、私の名前…?
そいつは…幽霊は、かすかに笑みを浮かべ、静かに私に話しかける
「先程は…危ないところであった…
大事ないか?」
はい?
「おぬしにうまく憑依出来たお陰で…あの不逞の輩を退治することができたが…」
はい?
ヒョウイって…つまり、私に乗り移ったってこと?
この、幽霊が?
私は思い切って、尋ねてみた
「あの、つまり…あなたが私に乗り移って、助けてくれたってこと?」
「然り。」
ううん、なんか難しい言葉しゃべるな、このヒト
あ、ヒトじゃないか
でもまあ、一応お礼言っとこう
「あの…助けてくれて…ありがとう…」
なんか、しおらしい少女みたいだ
少女だけど。16歳の…
私が始め感じていた恐怖感は…この幽霊に対する恐怖感は…徐々に薄れてきた
助けてもらったしね。
「あなた…あなたが、あの剣道のようなワザで、あいつらをやっつけたの?」
「然り。しかし、そなたのような軟弱者の体を操るのは骨が折れたわ。
日々鍛練に精進するがよい」
なに?軟弱者だって?
タンレン?ショウジン?
またもう、難しいこと言って…
失礼な!なんか腹立ってきた
「あのねえ、私、16歳の女の子なんですけど。」
「存じておる。軟弱故に、寺小屋でいじめられておろう」
あれ?何で知ってるの?
しかもなに?寺小屋って?
ひょっとして、私が通ってる高校のこと?
私の脳裏に、最近の記憶が甦る
教室で、永原レイカたちを詰問したとき…
マミを教室で慰めていたとき…
白昼にも関わらず、体が硬直して、金縛りに遭って…
「ま…こと…ま…こと…」って変な声が聞こえてきて…
「…あなた、ひょっとして、大分前から、私に…私に…」
「…そなたの学友が、探しておる
今日はこれにて…」
「ちょ、ちょっと!」
待ってよ!と言うつもりが、そいつがいきなり蒼白い閃光を発し、消えてしまうもんだから、私は黙り込んでしまうしかなかった
周りを見渡す。薄暗い資材倉庫。
あいつは…
あいつは…どこへ行ってしまったんだろう
幽霊…だよね?
私に乗り移ったり、急に出てきたり、
消えたり…
でも、何故か、暖かみのある…
また出てくるのかな?
んん?あいつ、何か言ってたな?
ガクユウ?友達のことかな
………
マミ!
マミのことだ!
そもそも、彼女を探して、ここまで来たんだっけ。
資材倉庫の裏から、またバイクの排気音が聞こえ、走り去っていく
終わった…
出口の方を見たまま、私は仁王立ちしている
パシュッ!パシュ!パシュッ!
乾いた音がして、私の体から力が抜ける
私を包んでいた、淡く青白い光も姿を消す
ガックリと膝をつき、両手も床につく
荒い息をつく
…ああ、さっきは…
一体、なんだったんだろう
私に乗り移ったのは、一体誰?
いや、そもそも人間なの?動物なの?
…わからない、何もわからない
でも、何とか助かった
そして、私の頭の中は、台風が過ぎ去った後のように混乱している
とにかく、ここを出よう
うつ向いて、床を見ていた私は、ゆっくりと顔を上げる
起き上がろうとする
目の前に、蒼白い光が見える
…ん?
蒼白い、光?
ゆっくりとその光を見上げる
光はやがて、形を変えていく
人のような、形…
「ひゃあああっ!」
幽霊!
お化け!
疲れているはずなのに、私はピョンと飛び上がり、尻餅をついた
ユウレイダ!
オバケダ!
体が地震の初期微動のように、ガタガタ震えてくる
チンピラたちからレイプされかけた時に感じた恐怖とは別物だ
怖い!逃げなきゃ!
体がガタガタ震えて、動けない!
そいつは…幽霊?は、尻餅をついて動けない私を、無表情に見下ろしている
混乱して、恐怖に支配されている頭の中で、必死に考える
呪文だ!魔物払いの呪文だ!
…何だっけ?あれ…ええと…
『…エロイムエッサイム、我は求め訴えたり…』
ああ、違う!
これは悪魔召喚の呪文だ!
ええと…
『アッラーフ・アクバル…』
これも違う!イスラム教だ!
幽霊は…あわてふためいている私を、相変わらず見下ろしている
逃げられないなら…
呪文も思い浮かべないのなら…
と、と、とりあえず、話しかけてみよう
「ふ、フーアーユー?」
ああ、私って馬鹿…
幽霊に反応なし
落ち着こう、まずは落ち着こう。
ぎこちなく深呼吸、2回。
「あ…あなた、だれ?」
幽霊のような物体に話しかける
「い…とう…さい…」
うわ、しゃべった!
ゆゆゆゆうれいが…しゃべった!
「せっしゃ、は…はりま…いっとうさい…」
なななんか、しししらないけど…
なな名前みたいなことを、いいいってる!
どどどうしよう…
あ、そうか、私がもともと、「あなた、だれ?」って聞いたんだっけ。
「あ、あの、わわ私は…」
「存じておる…宮田…まこと殿…」
ひえええ…!何で知ってるの、私の名前…?
そいつは…幽霊は、かすかに笑みを浮かべ、静かに私に話しかける
「先程は…危ないところであった…
大事ないか?」
はい?
「おぬしにうまく憑依出来たお陰で…あの不逞の輩を退治することができたが…」
はい?
ヒョウイって…つまり、私に乗り移ったってこと?
この、幽霊が?
私は思い切って、尋ねてみた
「あの、つまり…あなたが私に乗り移って、助けてくれたってこと?」
「然り。」
ううん、なんか難しい言葉しゃべるな、このヒト
あ、ヒトじゃないか
でもまあ、一応お礼言っとこう
「あの…助けてくれて…ありがとう…」
なんか、しおらしい少女みたいだ
少女だけど。16歳の…
私が始め感じていた恐怖感は…この幽霊に対する恐怖感は…徐々に薄れてきた
助けてもらったしね。
「あなた…あなたが、あの剣道のようなワザで、あいつらをやっつけたの?」
「然り。しかし、そなたのような軟弱者の体を操るのは骨が折れたわ。
日々鍛練に精進するがよい」
なに?軟弱者だって?
タンレン?ショウジン?
またもう、難しいこと言って…
失礼な!なんか腹立ってきた
「あのねえ、私、16歳の女の子なんですけど。」
「存じておる。軟弱故に、寺小屋でいじめられておろう」
あれ?何で知ってるの?
しかもなに?寺小屋って?
ひょっとして、私が通ってる高校のこと?
私の脳裏に、最近の記憶が甦る
教室で、永原レイカたちを詰問したとき…
マミを教室で慰めていたとき…
白昼にも関わらず、体が硬直して、金縛りに遭って…
「ま…こと…ま…こと…」って変な声が聞こえてきて…
「…あなた、ひょっとして、大分前から、私に…私に…」
「…そなたの学友が、探しておる
今日はこれにて…」
「ちょ、ちょっと!」
待ってよ!と言うつもりが、そいつがいきなり蒼白い閃光を発し、消えてしまうもんだから、私は黙り込んでしまうしかなかった
周りを見渡す。薄暗い資材倉庫。
あいつは…
あいつは…どこへ行ってしまったんだろう
幽霊…だよね?
私に乗り移ったり、急に出てきたり、
消えたり…
でも、何故か、暖かみのある…
また出てくるのかな?
んん?あいつ、何か言ってたな?
ガクユウ?友達のことかな
………
マミ!
マミのことだ!
そもそも、彼女を探して、ここまで来たんだっけ。