先輩を、じっと見上げる。
どことなく楽しそうな彼の姿に、揶揄われているのかもしれないと思った時。
「へ? んんっ……」
なぜか唐突に落とされたキスのせいで、一瞬部屋に落ちる沈黙。
わたしの文句を器用にキスで封じ、全身を思考まで余すところなく溶かされる。……だめ、だ。
「ず、るい……」
息が上がるくらい長いキスを終えて、熱くなった顔を隠すように、シーツに顔を埋める。
ひんやりとしたそれに心地よさを感じるほどの熱さで恥ずかしがるわたしを他所に、先輩はするりとベッドからおりた。
「……なんでキスしたんですか」
「して欲しそうな顔で俺のこと見てたから」
っ、とんだ自意識過剰だ。
わたしが知りたかったのは、あの一連の会話が冗談かどうかってことだけなのに……!
「……さっき、都合が悪いって言っただろ」
届いた黒いキャリーケースを開けているのか、かち、と音がする。
顔を隠していてその様子が見えないけれど。聞きながら一瞬会話を遡って、「はい」と返事した。
先輩がさっき言い淀んでいたアレだ。
「……両親と暮らしたいっていうお前の気持ちは優先してやりたいけど。
せめて選択肢に、俺のことも入れてくれないか?」
「……え?」
「ん」