それでも、いいの。
どんな理由だって、いまは構わない。
それに。
先輩が14年前にあの約束を交わしてくれなかったら、わたしはずっと囚われの身のままで生きていくことになっていたかもしれない。
そう考えたら、
先輩にお礼を言うのは間違ってない。
「……怖がらせるようなこと言って悪かったな。
こっちでちゃんと保護するから、安心しろ」
「は、い……」
帰ったら。顔を合わせたら、きっと。
わたしは両親に怒ってしまうんだろう。だって、情緒不安定に泣きながら怒る自分の姿が想像できる。
なんでわたしには何も話してくれないのって。両親を犠牲にしてわたしだけが残るのなら、わたしを犠牲にして研究をやめたほうがよっぽどみんなが幸せなれるのにって。
そう怒ってしまう、はずなのに。
両親がそれだけわたしに愛情を注いでくれていたのだと思えば、すごくすごく泣きたくなる。
ずっと一緒にいられなくて、まるで子どもみたいなちっぽけな夢を抱いていたけれど。
愛されなかったことなんて、一度もなかった。
「ああ、そうだ。
お前の両親、これから先も珠王の研究者として働くらしい。……お前と普通に生活しながらな」
「え……」
「お前が望んだ通り、これからは一緒に暮らせる。
だけど、だ。……それじゃ都合が悪い」
一緒に暮らせるのに、都合が悪い……?
もしかして両親の職場の近くじゃ王学に通えないんだろうか、と。
無意識にこれからも王学に通い続けることを考えている自分に驚いたけれど。
話を促すように首を傾げるわたしの頭をなでるだけで、なぜか先輩はその続きを話してくれない。