……来客?

いやでも、場所を教えてないのに誰かが来るはずがないし。



ホテルマンが何かの用事で尋ねてきたのかしら、と。

そろりとドアに近づき、「はい」と開けてみれば。



「……相手が誰かわかんねえのに、

簡単に部屋のドア開けるんじゃねえよ」



……え? え?



「俺だったからよかったけど。

もしお前に何かあったら困るだろ」



呆れたようにため息をこぼす彼。

わたしの、好きな人。



いや。

日本にいるはずの、わたしの彼氏。




「な、んでここにいるんですか……?」



予想外すぎる相手に、おどろきすぎて暫しフリーズ。

それから口を突いて出たのは案外マトモな疑問で、彼は「あ?」と一瞬めんどくさそうにして、再度ため息を吐いたあと。



「お前を迎えに来たに決まってんだろ」



「や、でも、」



うん。なんとなくそんな気はした。そんな気はしたんだけど、だ。

わたしが、現時点で未だに政府の人質であることは変わらないわけで。



何も解決してないんじゃ、と先輩を見上げる。

その瞬間。脳裏で再生されたのは、ついさっき電話で聞いたばかりのそれ。



「まさか、爆発と何か関係してるんですか……?」