よしよしと頭を撫でる。

「ありがと」ってお礼を言ったら、彼は嗚咽を堪えるためにくちびるを結んで黙り込んだ。



強がっていても、肩を震わせて必死に縋るその姿は、まだ幼い男の子だった。

アイドルのNANAでもなく、わたしの彼氏として背伸びしていたあの頃でもなく。年相応の、15歳の男の子だ。



「……ネックレス、うれしかったんだよ」



「、」



「俺のこと見てくれてなくても。

ナナが俺のためだけに選んでくれたネックレスだから。……ほんとは、すごいうれしかった」



夕陽の手が、そっとわたしの背中に触れる。

気づけばわたしよりも大きく成長した夕陽。



惜しむように、そっと離れた彼は。

いままでで、いちばん綺麗な笑顔だった。




「いつみが、迎えに行くって言ってんなら。

戻ってくるんだろうし、そのときは、また俺に会いに来て。……アイドルの俺でも、素の俺でも、どっちでもいいから」



「……うん」



「すぐ戻ってきてくれたら嬉しい」



「……それは、いつみ先輩次第」



彼が何をどうする気でいるのか検討もつかないけど。

なんなら受験勉強を邪魔したくなくて、ロクに顔も合わせてないけど。



「……せめて、連絡して」



そう言った夕陽に「わかった」と微笑んで。

最後にもう一度だけキツく抱きしめて、離れた。