ぽたぽたと、涙がこぼれ落ちる。

とめどなくあふれるそれを拭うこともせずに先輩に「ごめんなさい」と謝り続ければ、彼はただ苦しげに眉間を寄せて。



「……悪くないんだから、謝るな」



差し出された言葉がこれほどに痛いなんてこと知らなかった。

涙を拭ってくれる優しすぎる指先に、この謝罪の意味が告白の返事ではないことを伝えられなかった。



大和の時は、こんなに苦しくならなかったのに。



「……俺のせいだな」



抱きしめられて、腕の中で首を横に振った。

もう夕陽のときみたいに、中途半端に感情だけを残して行きたくない。だから、言わないで別れてしまおうと。会えない場所に行こうと。



そう、決めたはずだったのに。




想えば想うほど好きになる。

好きになれば好きになるほど切なくなる。



切なくなれば切なくなるほど、愛おしくなって。



「ッ、」



くちびるが触れ合ったのは、3度目だった。



ルノは婚約者と会う前にわたしに告白して最後だと決めていたようだけれど、それ以上に、最後だと思わせられるようなキスだった。

キスとも言えない、別れの儀式みたいな。



先輩に「これで終わりにする」って言われたみたいで。

余計に涙があふれて止まらなくて、ただひたすらに苦しかった。



そんなこと。

……先輩に、伝えられるはずもないけど。