目の前が真っ白になる。

言われたことを理解しようと思うのに、無意識にそれを拒んでしまいそうになるくらいに、嫌な響きを持った言葉だった。



「俺のこと、すっぱりふってくれればいい」



「違、っ……」



とっさに否定の言葉が出た。

だけど言えないからとそれを飲み込んだ瞬間にじわりとあふれてくるのは涙で。先輩の前で泣くわけにはいかないと気を引き締めるけれど、止まらなかった。



ちがう。ちがうの。

先輩だけが、たったひとり、とくべつで。



「……わ、たし、」



声が震える。言えないのに。

言っちゃいけないのに。言いたかった。




「っ……」



好きだって、言いたかった。

本当は先輩と同じ気持ちでいるって。キスを拒まないのも告白の返事をしないのも。ぜんぶぜんぶ好きだからなのに、どうして、言えないの。



どうして先輩にそんな顔させなきゃいけないの。

こんなにも、好きなのに。



「ごめん、なさい……っ」



一体あの日のわたしは。

あなたが好きになってくれたときのわたしは、どんなに魅力的にうつったんだろう。



記憶が、もどればいいのに。

感情を掻き混ぜられてごちゃごちゃになった記憶の中から、あなたを見つけ出すことができない。



「先輩のこと、傷つけて、ごめんなさい……っ」