「っ、」
意識した途端、呼吸がままらなくなって。
最後にふたりきりになったのはあのキスの日以来なんだと思い知る。無意識にふたりきりを避けてきた。だから、こんなにも息がつまる。
苦しい。
先輩がわたしを好きでいてくれることが苦しい。
「南々瀬」
「は、い」
「……白状すると、な。
ここ最近俺が体調崩してんのは、お前の気持ちがわからなくてから回ってるせいだ。知恵熱とまではいかねえけど、考え込んで支障をきたしてる」
その言葉に、ハッとする。
思わず顔を上げて先輩を見たけれど、マスクのせいでいつも以上に表情が読み取りづらい。
「あの日。
……お前がキスを拒まなかった理由」
ぐるぐるする。
どう言い訳していいのか時間が経った今もわからなくて、みんなの対応も自分の感情もこの先のことも考えて、ぐるぐる頭を巡る悩み。
「なあ、南々瀬」
名前を呼ばれるだけで、こんなにも切ない。
「ルノがお前の優しさは残酷だって言ってたが、それは俺も分からないわけじゃない。
でもどうせお前は優しいから言わねえんだろうと思って黙ってた。……もういいぞ」
「え……?」
「拒んでもいい。
……たとえお前にフラれたとしても、別にお前への基本的な態度は何も変えねえから安心しろ」