いや、勘違いじゃねーし。

……でもまあいつみがこういう言い方してくれてんのも優しさだってわかってる。分かりにくいだけで、言われてみればいつみは昔から優しい。



「はっ、誰に言ってんだよ」



「お前にだよクソガキ。

っつうか重いんだよ荷物。いつみ自分の持てよ」



「デキる俺の右腕になりてえんだろ?

なら俺の荷物ぐらい黙って持ってろよ」



「こんな横暴な主人がいてたまるかよ」



「……仕方ねーから俺が持ってやるよ」



夕帆から、いつみの荷物だけを受け取る。

そうすればいつみが不敵に口角を上げたけど、何もなかったかのように無視した。




……その後の俺はといえば、中学ではずっと教室に通わずに別室を貸してもらってた。

あの財布の一件があって俺に何か言いたげだった担任が、そういう配慮をしてくれて。



一応学校行事なんかにも出てたけど、ダチってほど仲良いヤツも作らないまま。

手の空いてる教師に勉強のわかんねーとこだけ聞いて、放課後はいつみの家行って。夕帆は家でひとりで勉強してることも多かったけど、俺はいつみと勉強してた。



宣言通りいつみと夕帆は王学に合格したし、案の定生徒会役員にもなった。

俺は無事に成績を上げたし、もう周りの環境なんてどうでも良くて。



「よかったじゃない。無事に合格して。

まああたしたちが散々勉強教えてあげたんだから当然だけど」



「いつみこのオネエうるさい」



「オネエって言うんじゃねえよクソガキ」



翌年成績を復活させた俺は王学に受験して合格した。

なかなかの成績で入ったおかげで、生徒会役員候補者リストの中にも名前があって。