「……いつみ」
「………」
「お前が引き止めなかったら、俺が捨ててた命だ。
どうせならお前にくれてやるよ。……ただし」
「"ただし"?」
「拾った命の責任は、最後まで取りやがれ」
我ながらめちゃくちゃだ。
それを聞いたいつみも、ふっと笑って「なんだよそれ」って言ってるけど。頭に乗せられた手のぬくもりだけは、信じられそうだった。
瞳はいつも涼しげで。
だけどその手が優しいってこと、知ってるから。
「……つーか、だからなんでお前ここにいんの?
ウチもそうだけど、お前んとこ授業中だろうが」
「お前に何かあったら俺に連絡が来る」
「はあ?」
「俺も知らなかったが、お前の両親に信頼されてるからな。
何かあったらうちの学校に連絡が入って、教師から俺に伝わる仕組みになってた。……そういえばはじめは夕帆も一緒だったんだけどな」
「一緒だったんだけどな、じゃねえよ……っ!
おまっ、俺に荷物取りに行かせてる間にいなくなってるし、お前足早すぎて追いつけねえに決まってんだろうが……!」
バン!と勢い良く開く扉。
そこには息を切らして、ふたり分の荷物を抱えた夕帆。
……連絡入ってたならいいのかもしんねーけど、こいつら不法侵入で何か言われたりしねーのか。
つーか、連絡がいつみに入るってどんな方式だよ。なんでうちの学校はそれで真面目にいつみに連絡してんだよ。……それで助けられたけどな。