「こうやっても何も言わねえよ」
「……本当は不安なくせに、か」
「誰が不安なんて言ったよ」
「言わなくてもわかる。長い付き合いだってさっきから言ってるだろうが。
……もうお前の中じゃどうしようもないんだろ」
嫌いだ。嫌い。
毎回俺を拉致して何かと説教するふたりも、それを知っているのに何も変われない俺も、この環境も、ぜんぶぜんぶ嫌いだ。
「1回面白半分に"悪さ"して、
深みに嵌って抜け出せなくなったんだろ」
「うるせえよ」
何もわかってねーよ。
なんでもかんでも口に出せば手に入るようなお前と俺じゃ、住む世界が違いすぎる。
「小学生の時は優等生だったじゃねえか」
「うるせえって」
「そういうのは、真面目なやつほど深みに嵌るんだよ。
1回堕ちたら楽な世界を知って、甘え切っても許されるからいつまでたっても抜け出せなくなる」
「うるせえって、言ってんだろ……!」
ああそうだよ。小学生の時はこれでも優秀だったんだよ。成績も良かったんだよ。……でも違う。
真面目にやってたら、クラスの輪の中には入れなかった。真面目さが勝って、どこまで自分を許せばいいのかわからなくなった。
わからなくなったから、今度は捨てることにした。
捨てれば案の定俺の居場所はできた。それの代償は、積み重ねてきた6年。だけどその6年なんて、何の役にも立たねーようなことばかりだった。