こぼされるため息に、文句を言い返そうとして堪える。
以前から何度か拉致されて学んだことだが、ふたりの説教は文句を言うとさらに伸びる。黙って聞いているのが一番だ。
「まあ人間関係だの環境だの、
合わないことは誰にだってあるからな」
「……別にそんなんじゃねーし」
「ただの反抗期にしてはやけに重症だな」
見透かすような瞳が、声が、嫌いだ。
わかってほしいと思って反抗しているわけじゃない。わかってもらえないからでもない。だけどまるでそれを理解しているかのように見透かされたら、嫌味の一つも言えない。
「そんなん、いつみにわかんのかよ」
どうしようもないからこうするしかなかった。
俺の居場所は確かに"そこ"にあるのに。
「もう長い付き合いだからな」
「はっ、俺のこと週1で拉致してるだけじゃねーか」
「それ何年もやってたら長い付き合いなんだよ」
「つーか、マジで拉致とか迷惑だっての」
居場所がないなんて笑えるくらいに滑稽な話。
思っているだけで俺の居場所はある。なのに。
「こうでもしないとお前、何も言わねえだろ」
足掻いてるなんて馬鹿げてる。
何もないはずなのに、どうしてかひどく満たされないこの枯渇状態に喘いでるなんて、本当にどうかしてる。