珠王いつみ。

家柄良し、頭脳良し、容姿まで良しと来た。顔に寄り付く女と、学歴を求める女と、家柄も欲しい女。どれをとっても女が群がるタイプの男。



珠王の名前はそれなりに有名なこともあって、俺の中学でも有名だった。

そしてどこからともなく囁かれる、「馬村莉央は珠王いつみと知り合いらしい」という噂も、本当は間違いではなかった。



面倒事を避けるために、近所だって言ってるだけだ。

そうすれば「家が近いから知り合いなのか」と、遠くも近くもない理論で相手を納得させられるから。……まあ。



「お前またテスト真面目に受けなかったらしいな」



「……なんで知ってんだよ」



「お前の両親が深刻そうな顔して相談してきた」



……俺が一方的に絡まれてんだけど、と。

ため息に文句を隠して、「別にいーだろ」とそれを一蹴する。




「つーか、

なんで当然のように俺はここに拉致されてんだ」



「夕帆が毎回面白がって連れてくるからだろ?」



「その夕は」



「夕陽が家に来たから放っとけねえんだと」



なら連れてくんじゃねーよ。

家が近い上に、俺の両親はそれぞれ医療関係の仕事をしている人間だった。おかげで親同士も知り合いなのか、こうやってふたりに目をつけられるようになって。



どういうわけか俺の両親から話がいくらしく、何かと珠王家に拉致される。

いつもならここに夕帆を混ざってお説教。迷惑でしかない。



「……それにしても最近荒れてるなお前は」