まあ、いまは軌道に乗ってる父さんの会社が万が一、ほんとに万が一倒産とかしても困るから、そのためにもお金貯めてるみたいだけど。
それよりも俺らのため、っていうのは、なんとなく分かってた。
「……さすがにそんなに軽くないと思うよ」
「大丈夫だって。
……だから安心しな。わがまま言って良いよ」
「……あのね、兄ちゃん」
まっすぐに向けられる瞳。
……はじめて出会った時と、変わらないな。
「俺ね、別に王学に入りたかったわけじゃないんだよ。これは本当。
……王学じゃなくても良くて、兄ちゃんと同じ学校に、行きたかったんだよ」
「……え?」
むっと頰をふくらませた呉羽が、俺をじーっと見つめる。
俺と同じ学校に行きたかった?と。簡単なことのはずなのに理解しきれないそれを頭の中で噛み砕こうとしていれば。
「だって兄ちゃん、中学も私立行っちゃったじゃん……
おなじ学校に、いっしょに登校とかしたかったんだよ?小学校のときはいっしょだったのに、ばらばらになっちゃってさみしかったんだからね」
「……あ〜もう、なんなのお前」
俺の兄弟なんでこんなにみんなかわいいの?
「よっしゃ、王学おいで。
俺もう夜遊びしねえし実家もどってくるから。1年しか一緒に通えねえけど、毎日一緒に学校行こうな」
ぎゅうっと抱きしめたら今さら恥ずかしそうな顔するけど、絶対離してやんない。
「兄ちゃんもうやめて」って言われたけど、それでもしばらく抱きしめていたら、どうやら拗ねたらしい。
「……呉ちゃ〜ん?」