結構、無茶苦茶な詰め込み方じゃんって思った。

だいぶ無理して詰め込んだよねそれ、って。



だけど、それでも綺麗だと思った。

どうして家族なのに父さんの名前は入れてねえのって聞いたら、父さんの名前はどうあがいても入れられそうになかったからだって苦笑してたけど。



「……だから言ったんだよねえ、俺」



「……なにを?」



「父さんは、その一部じゃなくて。

それをずっと見守る存在でいて、って」



ほかの人にはわかってもらえないような、ひどく歪な家族の形だけれど。

それでも俺らにとっては特別で、家族と名乗れる存在。



あとで聞いたら、母さんは結婚願望というものが皆無に等しかったらしい。

愛し合っててそばにいられるなら結婚しなくてもいいじゃない、という謎の理論を繰り広げていた。それに元々母さんの両親が反対してたこともあって、籍を入れていなかったみたいだ。




それじゃあ青海さんは?って思ったけど。

青海さんも、自分を愛してくれてるんだったら、ほかにも愛する人がいてもいいじゃない、とこれまた謎な理論を繰り広げる人で。



……なんかもういいや、って笑ってしまった。

誰一人として苦しんでねえから。俺らは一緒に笑っていられるから。



「だから、

俺はちゃんと兄貴として呉羽の本音を聞きたいよ」



「……兄ちゃん」



「王学入りたいなら、おいで。

……これも言わねえつもりだったけど、どうして父さんと母さんと青海さんがそれぞれ忙しく働いてるか知ってる?」



夏休み中、俺が実家にもどってきているのは、夜まで子どもしか家にいないから。

母さんも青海さんもそれぞれ働きに出てて、父さんはもちろん自営業の会社の仕事をしてる。



「俺らのためだよ。俺ら4人が、この先も不自由なく暮らしていけるためにお金貯めてんの。

今度言ってみ?『王学行きたいの?いいよ』ぐらいのノリでたぶん良いって言ってくれるだろうし」