「っ、騎士先輩……!」



俺の安眠を返せ。

昨日は女の子たちの修羅場を追い払ったけど今日こそは、と。またもや寝不足で授業をサボって眠ろうとした俺の静けさとともに来たる安眠を返せ。



「誰だよ〜……って、ああ、」



八王子の兄のほうじゃねえの。

……瞳の色が弟と違うんだな、似てるのに。



「昨日、ルアのこと助けてくださったんですよね……?」



「……助けたつもりはねえからお帰りください」



「いや、なんでそんな冷たいんですか。

お礼を言うために来たんですから話ぐらい聞いてください」




……お礼って。大袈裟だな。

本当に助けたつもりはなくて、ただ俺にとってはかわいい弟を庇おうとしたのと同じこと。



そう思って、ふと気づく。



「……騎士先輩?」



「お前、なんで弟のこと庇ってんの?」



「え? ルアのことですか?

大事だから庇ってるんです、兄として」



双子ですけど、と。小さく付け加えたプリンスの、ブラウンの瞳をじっと見つめる。薄くグレーのかかるそれ。

俺の問いかけが不思議だったようで、きょとんとしたその姿は、どこかふわふわとした雰囲気のプリンスの片割れとよく似ていた。



……昨日、庇った時。

俺は、呉羽の姿が重なったから、ルアをあの場から逃がしてやった。──でも、それって。