だから、知りたかった。
どうして父さんがふたりの女を同時に愛せるのかも、それで筋が通るのかも。知りたくて、あえて結婚してる女性にばかり声をかけた。
幸いにも、容姿に恵まれた俺の誘いに乗ってくれる女の人は多かった。
しかも俺が幼かったこともあって、"初々しい男の子を可愛がれる"チャンスを、旦那との関係に上手くいかない人妻がそう逃すわけもない。
その予想と反して結局じっくり味わうのは俺の方で、指輪をしていようとしていまいと、女は結局女のまま。
熱っぽい表情で指輪を嵌めた指を俺の首裏に絡めた彼女たちは、俺の問いかけに揃いも揃って同じことを言う。
「旦那と俺の、どっちが好き?」
「ふふ……
そんなの、椛に、決まってるでしょ?」
知りたかったはずなのに、結局わからなかった。
何度も何度もその体温とともに言葉を求めたのに、「旦那も椛も大事」と言ってくれる人は、たったのひとりもいなかった。
同じ分だけふたりの男を愛せる女なんていなかった。
「……だっり」
夜更けまで遊んでいたら、次の日授業は眠い。
でもまあ中学だし。義務教育で世間は卒業させてくれるし。私立に通わせてもらっていたくせに、俺は遅刻とサボりの常習犯だった。
だけど父さんも母さんも青海さんも何も言わない。
それが俺ら兄弟に対する罪悪感があるからなんじゃないかなって、そんなことも何度も考えた。
"椛"と、つけられた名前のように。
綺麗な人生は、歩めそうになんて、なかった。
「───」
「───」
「ああもう、うるっせえな……
誰だよまじで、俺の睡眠妨げやがって……」