「同じ名前?」


いつもの火曜日、6限目が終わった頃。
音楽室からいつものように、移動していた時だった。



高校からの友人、鈴森叶波(すずもり かなは)はその言葉にニヤリとする。



「そうそう。隣のクラスにいて、私と同中の男子なんだけど。めっちゃ問題児でやらかしたりしてんだけど...知らない?有名だよ結構」



「知らない...私あんまり興味無いし...」




叶波いわく、どうやら同じ名前の男子がいるらしい。





天宮 七星(あまみや ななせ)。高校二年生。
わたしは周りに興味が無い。



人見知りで、コミュニケーション能力も低いし、こうやって高校から普通に喋れるのは叶波だけ。まあ叶波のフレンドリーさで助けられてるんだけれども...。




そんな私だからこそ、同じ名前の男子がいたところで見たいとも気にもとめない。



「ほとんどの人知ってると思うんだけどな。バスケ部のエースでもあるし、人気は高いね。あ、でも女たらしだからやめときなよ?」



「いや見たこともない人好きになんてなりませんから...」






ちなみに叶波は男子バスケ部のマネージャーをしている。

まあ彼女がマネージャーに入った理由は...





「おー鈴森と天宮。」




「ふぇ!?」



後ろから声をかけられる。
変な声出して、真っ赤にした叶波の視線は、高身長の爽やか系男性だった。


「なんだその声ー。あ、鈴森今日ミーティングって伝えてくれる?」


「わ、わわわわかりました!!!」





そういった高身長の男性はニコッと微笑み私達の横を過ぎ去る。


その後ろ姿を幸せそうな顔で叶波は見ていた。




「かっこいいよねえ...八神先生...」



「まあ若いしね」




八神千早(やがみ ちはや)先生は、先生の中で一番私たちと歳が近い先生。

体育の先生で、バスケ部の顧問をしている。去年ここの学校に来たばっかりで、叶波はこの八神先生を追ってこの学校に来たとかなんとか...




そう、あきらかに叶波は恋をしているのだ、八神先生に。




「あんなにかっこいい先生なんていないよ...あーー本当に来てよかった!受かってよかった!!バンザイ!!」


「静かにしてよちょっと」





そんなくだらないやりとりをしていると、私の手元にあるあったプリントが手から滑り落ちる。



「あ」



その瞬間、誰かの足元にそのプリントが落ちる。





「あーすみませ...」







顔を上げると、茶髪気味の男子だった。
耳にピアス穴があり、目は透き通るような綺麗な瞳だった。


言葉を私は失っていると、彼はそのプリントを見た。



「天宮...七星...?」






「は、はい」




するとその男子は驚くような声を上げた。




「七星って同じ名前じゃん!!!」






これが全ての始まりだった。