きなこ棒を口にくわえたまま、ガチャガチャの景品を袋から出していく。店の前には真新しいガチャガチャが四台も慣らんでいる。視覚も意識したのか、昔ながらにあるガチャガチャ機で100円のものしかない。私もビックカツを食べながら、鳩の隣でのんびりとするこの日常がなんだかとっても愛おしくなった。
「うーーん。香りで俺を惑わすとは、駄菓子って怖いっす」
「ヨーグルとポテトフライも食べときなよ」
「そう言えばさっき、三分一さんがこっちにお詫びの品と新しい運送会社のパンフレット持って営業に来て、重爺ちゃんに塩ぶつけられてたよ」
「あの人も懲りないよね。どうよ、三分一さんってどんな香りがする?」
 鵺が昨日、狐みたいなふわふわした尻尾をつけていたと、そばを啜りながら話していたし、ひととせちゃんは威嚇して毛を逆立てていた。
「うーん。そうっすね。はっきり言うと」
 酢昆布に手を伸ばしなら、鳩が真面目な顔で言う。
「嘘臭い」
「ぷっ」
 鳩の言葉に心の底から笑わせてもらった。そうだ。それでいい。どうせ見えないものなんて戦うしかないんだから。
【終】