「わたし、この前あの山で宇宙人と会ったの」

これだけでもかなり緊張するし、何を言われるかわからない恐怖もある。

もちろんお父さんとお母さんは内容を理解できていなくて、口を開けて呆然としている。

「宇宙人……」

お父さんはそう言ってから表情を変えた。目を大きく見開けて驚きの表情へと変化させた。

「それでね、その宇宙人とは仲良くなったんだけど、あの子には家族もいないしわからないこともたくさんあって、ひとりぼっちにはさせたくないの。だから……」
「だから?」

ごくりと唾を飲み込んだ。今更、バカにされるんじゃないかって不安になってきてたまらない。

だけど、決めたことはやらなきゃ。

「だから、この家で一緒に住んでもいい?」

きっとそんなに緊張することではないのだけど、なぜか異様に緊張してしまう。

宇宙人と一緒に住みたい。って言ってるのと同じなのに。

それなのにこんなにも緊張してしまう。

「宇宙人ねぇ……」

お父さんは頭を抱えて悩ませていた。そりゃあそうだよね。

「その子を連れて来れる?」

お母さんは少し声を震わせていた。宇宙人が怖いのか、それとも宇宙人とわたしが友達だということが怖いのか。

わたしは頷いてリビングを出ていった。

「宇宙人なんていると思うか?きっと星夜の思い込みだよ。もしかして幻覚が見えるんじゃないか……?」

階段を上がっている途中に、リビングからお父さんの呆れたような声が聞こえてきた。

やっぱりそう思われちゃうよね。

「信じてあげましょうよ。星夜は嘘ついたりなんてしないんだから」
「だけど、宇宙人だぞ?さすがにな……」

後からお母さんの声も聞こえて、やがて会話へと変わっていった。どうやら二人ともわたしの発言に対して驚いたようだ。

あたりまえか。

わたしは部屋にいるピロを連れ出して、急いでリビングに戻る。

「お父さん!お母さん!」
「星夜……!」

ピロは肌を人間と同じ色に変えていて、容姿はまるで人間のようになっている。

驚きのあまり声を失ったお母さんは、手を口に当てて目を見開いていた。

「コンニチハ、ピロデス」
「しゃ、しゃべれるのか!?」

お父さんも目を丸くして椅子に座ったまま固まってしまった。

二人とも石のように固まって、ただ静かにピロを眺めていた。

「ピロは、いい子でとても賢いの。わたしにとって大切な存在だし、ピロからはたくさんのことを学んだの」

わたしが力強く説得するのと反対に、ピロは隣で呑気にニンジンをかじっていた。

次は空気を読む練習させなきゃね。

「そうか。星夜を変えてくれたのはこの子なのか」
「それなら……ね」

まだ少し怯えているようだけど、お父さんとお母さんは一緒に住むことを許してくれた。

まだ慣れないピロとの生活はわたしも少し不安だし、きっとピロも不安だと思う。

だからお互いに助け合う存在であることが大切なんだよね。