そして、菊池家全員とわたしで星を見に行くことになった。

家から裏山まではやや距離があるものの、自動車で移動するほどではなかったため、みんなで歩いて行くことにした。

午前中降っていた雨は止んでいて、お昼間は大きな太陽が照りつけていた。

どうやらわたしたちの地域はそこまでじゃなかったよう。

街はだんだん夜になるために準備をし始めているけれど、まだ空には星が姿を現していない。

わたしは、星が出ていないとまだ夜じゃないと思う。

わたしたちは、いくつかの店が並んで賑やかになっている通りの反対側にある、あまり人気のない暗いアスファルトの道を進むことに。

菊池家によると、こっちの道の方が近道だと言う。

「星夜ちゃんは今も星が好きなの?」

家を出てから長く続いた沈黙を破ったのは、菊池のお母さんだった。

街灯の灯りがなく、光の差し込まない暗いこの道でも、優しそうなその顔はハッキリとわたしの目に映った。

「はい。毎日星空を見に行ってました」

わたしは夜空に向かって微笑んだ。

例え天気の悪い日でも、星が見えない日だとしても毎日見に行くのがわたしの日課。

それをずっと守っていくはずだったのに、つい昨日破ってしまったところだ。

「だけど、昨日は見に行けてないんです。だから今ものすごくドキドキしてるんです」

わたしはそっと胸に手を当ててみた。

確かにそこの動きは速くなっていて、それが緊張を示しているのか不安を示しているのかはわからない。

もしかしたら二つともなのかもしれない。

「よかったわ。星夜ちゃんは将来星みたいに輝かしい人になれるわよ」

お母さんはまた優しく笑った。

わたしは照れて赤くなった顔を隠すために、下を向いた。

だって星みたいに輝かしくなれるとか、最高の褒め言葉でしかないもの。

「何より、星夜ちゃんが元気でよかったよ」

お父さんは明るい声色でそう言ってから、大きな声で笑った。

血の繋がらない菊池家の人が、こんなにも自分のことを心配してくれていたんだと思うととても嬉しかった。

こんなに優しい菊池家と仲の良かったお父さんとお母さんは、いったいどんな人だったのかな。

わたしのお父さんとお母さんはどんなことを考えているのかな。

今もちゃんとどこかで生きてるかな。

わたしのこと覚えてるかな。

わたしに戻って来てほしいって思ってるかな。

妄想を広げていくと、だんだん不安な気持ちも生まれてきた。

もしかしたらわたしのことを邪魔に思うかもしれない。わたしのことを必要としていないんじゃないかって。

もしそうだとしたら、わたしの居場所はどこにもなくなってしまう。

わたしは本当にひとりぼっちになっちゃうのかな。

いや、違う。ピロがいた。ピロはそばにいてくれるはず。

だってピロはいつでもついてきてくれて、何度もわたしの名前を呼んでくれた。

たまに芽生えるピロに対しての不思議な感情はこれだったんだ。

きっと"安心感"がわたしの心を癒してくれたんだ。

さっきまでの"ひとりになることへの不安"は全て消え、なにか温かいものでわたしの心の中は埋め尽くされた。