それから特に困ることはなかった。
設備も整っていて、食糧も全員分あって誰も文句を言う事がなかった。
この日は一日中晴れていたけど、まだ避難しなくてはならないらしい。
「あら、もうこんな時間」
お母さんは体育館内の時計を見上げて呟いた。
辺りはすっかり真っ暗になっていて、お腹も少し空き始めていた頃。
「じゃあちょっとお母さんご飯貰ってくるから、ここで待っててね」
お母さんはそう言って、お父さんと一緒にわたしたちの元から離れてからずっと戻って来ていない。
一時間も二時間も経ったけど、全く帰って来る様子がない。
きっと子供だったから長く感じたのだろう。
「ねぇ、ナイト!わたし、いいとこ知ってるんだ」
もう夜になったのだから、きっと綺麗な星空が見えるだろうとわたしは思った。
今日は一日中晴れていたし、雨が降る様子もないから裏山にでも行きたかったんだ。
「そうなの?行ってみたい!」
ナイトは目を輝かしてわたしの案に乗ってきてくれた。
今考えれば、その一言で全てが変わってしまったんだとわかる。
わたしたちは、誰にもバレないようにこっそり体育館裏から外に出た。
山への道はすぐそばにあって、そのまま登って行くことが可能で、小さな子供でもすぐに頂上まで辿り着けた。
しかし、所々地面が雨のせいで柔らかくなっていて不安定になっていた。
二人とも何度か転げ落ちそうになったけど、お互いに助け合って、運良く命拾いした。
「わぁ……」
わたしの想像した通り、夜空には幾千もの星が輝きを放って並んでいた。
この時ナイトは星空の魅力を知らなかったけど、わたしの影響で星を好きになったという。
「これ使う?」
わたしは、ボロボロになった幼稚園用バッグから望遠鏡を取り出した。
そのバッグはお母さんが作ってくれたもので、ずっと使い続けていた。避難生活を送るうちに汚れてきたけど。
ナイトは望遠鏡を手に取って、楽しそうに望遠鏡を覗いて夜空を眺めた。
「すごく綺麗だね!星ってこんなに綺麗なんだ……」
わたしも続いて覗いてみた。
やっぱり綺麗なのは変わらなくて、一つ一つがそれぞれの光を魅せている。
まるでそれは、「人それぞれだ」って言ってるみたいで、わたしは昔からその言葉に救われていた。
「お父さん……お母さん……」
この星空を二人にも見せてあげたい。一緒に見たい。
「大丈夫だよ。僕がいるもん」
菊池はそう言って、わたしに微笑みかけた。
家族でもないし、何でもないはずなのになぜか安心できる。
そう思った時、不安になっていた心が落ち着いた気がした。
「あら、こんなところで何してるのかしら」
急に知らない人の声がしたため、反射的に振り返ると目の前が真っ暗になった。
どうやらわたしは知らない人に黒い布で包まれたみたい。
「セイヤ!セイヤー!」
いきなりの出来事にわたしはパニック状態に陥り、最後にそう呼ばれたのにも気が付かなかった。
設備も整っていて、食糧も全員分あって誰も文句を言う事がなかった。
この日は一日中晴れていたけど、まだ避難しなくてはならないらしい。
「あら、もうこんな時間」
お母さんは体育館内の時計を見上げて呟いた。
辺りはすっかり真っ暗になっていて、お腹も少し空き始めていた頃。
「じゃあちょっとお母さんご飯貰ってくるから、ここで待っててね」
お母さんはそう言って、お父さんと一緒にわたしたちの元から離れてからずっと戻って来ていない。
一時間も二時間も経ったけど、全く帰って来る様子がない。
きっと子供だったから長く感じたのだろう。
「ねぇ、ナイト!わたし、いいとこ知ってるんだ」
もう夜になったのだから、きっと綺麗な星空が見えるだろうとわたしは思った。
今日は一日中晴れていたし、雨が降る様子もないから裏山にでも行きたかったんだ。
「そうなの?行ってみたい!」
ナイトは目を輝かしてわたしの案に乗ってきてくれた。
今考えれば、その一言で全てが変わってしまったんだとわかる。
わたしたちは、誰にもバレないようにこっそり体育館裏から外に出た。
山への道はすぐそばにあって、そのまま登って行くことが可能で、小さな子供でもすぐに頂上まで辿り着けた。
しかし、所々地面が雨のせいで柔らかくなっていて不安定になっていた。
二人とも何度か転げ落ちそうになったけど、お互いに助け合って、運良く命拾いした。
「わぁ……」
わたしの想像した通り、夜空には幾千もの星が輝きを放って並んでいた。
この時ナイトは星空の魅力を知らなかったけど、わたしの影響で星を好きになったという。
「これ使う?」
わたしは、ボロボロになった幼稚園用バッグから望遠鏡を取り出した。
そのバッグはお母さんが作ってくれたもので、ずっと使い続けていた。避難生活を送るうちに汚れてきたけど。
ナイトは望遠鏡を手に取って、楽しそうに望遠鏡を覗いて夜空を眺めた。
「すごく綺麗だね!星ってこんなに綺麗なんだ……」
わたしも続いて覗いてみた。
やっぱり綺麗なのは変わらなくて、一つ一つがそれぞれの光を魅せている。
まるでそれは、「人それぞれだ」って言ってるみたいで、わたしは昔からその言葉に救われていた。
「お父さん……お母さん……」
この星空を二人にも見せてあげたい。一緒に見たい。
「大丈夫だよ。僕がいるもん」
菊池はそう言って、わたしに微笑みかけた。
家族でもないし、何でもないはずなのになぜか安心できる。
そう思った時、不安になっていた心が落ち着いた気がした。
「あら、こんなところで何してるのかしら」
急に知らない人の声がしたため、反射的に振り返ると目の前が真っ暗になった。
どうやらわたしは知らない人に黒い布で包まれたみたい。
「セイヤ!セイヤー!」
いきなりの出来事にわたしはパニック状態に陥り、最後にそう呼ばれたのにも気が付かなかった。