そして、一番寒いのは朝だった。

目覚めると一気に寒気が体中を駆け巡って、恐ろしいほど鳥肌がたった。

しかし、昨日地面を流れていた雨水は消えていて、辺りはとても静かだった。

その代わり、霧が視界を遮っていて隣の菊池の存在を確認することができなかった。

菊池はちゃんと生きているのかな。
生きてるよね。大丈夫だよね。

ずっと一緒にいた友達を失うことは絶対に嫌だった。だからいつも離れなかったし、離さなかったんだ。

ぼーっとしていると、お母さんがまだ寝ぼけているわたしを抱き抱えて家の中に入っていった。

お父さんも大量の荷物を抱えて一緒に入った。

一階には嫌な臭いが漂っていて、水に流されてきたゴミで荒らされていた。

その臭いは生ゴミと似ているものだった。

今まで一度も見たことのない光景に、わたしは思わず息をのんだ。

わたしは、まるでごみ捨て場みたいな家をもう見たくなかった。

なぜなら、なんだか心が締め付けられて苦しくなってきたから。

お母さんは優しく背中を撫でてくれて、わたしはきちんと家にお別れをした。

意外と外はもっと酷くて、お父さんとお母さんの靴にドロドロの土が引っ付いていた。

それでも嫌な顔を一つも見せず、わたしを抱えたまま足を進めていった。

避難所は家からすぐ近くの公園にある体育館で、そこはとても広かった。

実は過去に何度も行ったことがあって、馴染みのある場所の一つでもあった。

裏には小さな山もあって、遊べる場所が充実している最高の公園だ。

霧で目の前が見えなくても、ある程度公園までの感覚は掴めていた。

「うそ……」

急にお母さんの顔が青ざめて、お父さんはわたしの目元を手で塞いだ。

どうやら道の端っこに死体があったらしい。

きっと昨日の大雨で流されてきてしまったのだろう。

気の毒なことだ。

きっとわたしの住んでいたところがよかっただけで、もし山奥に住んでいたらわたしも死んでいたのだろう。

「大丈夫だ。ほら行くぞ」

お父さんはショックを受けているお母さんを慰めてまた進み始めた。

すると、霧の隙間から少しずつ入口のようなものが見えてきた。

あともう少し……あともう少しで……

「ナイト!」

やっと着いた公園の入口には、菊池家の全員が立っていたのだ。

名前を呼ぶとすぐに返事を返してくれて、わたしの元へ走ってきてくれた。

わたしたちはお互いの生存を気にしていたので、安心のあまり思いっきり抱き合った。

お互いの両親も頬を緩ませて笑顔を浮かべていた。

ここまで来れば、もう安心。

昨日のような恐怖はもう訪れないだろう。