そして次は、メインの牛肉を食べてみる。

これはピロも気に入るんじゃないかな。

「ン?」
「どう?」

牛肉を食べながら首を傾げるピロの表情は、だんだんすごいことになってきた。

「ヤーダ!」

なんと牛肉も気に入らなかったらしい。

わたしは今まで牛肉を嫌いと言う人になんて、出会ったことがない。

やっぱり住む星が違うと、文化も好みも違うんだろうな。

そして最後にニンジンを食べてみた。

ニンジンって子供の嫌いな食べ物の代表だよね。

そんなものを気に入るわけがない、と諦めながらもピロに真似させた。

「どう?」
「コレナニ?」
「ニンジン」

ピロは少し下を俯きながら、ニンジンを噛み締めていた。

すると表情が一変して、またその場に立ち上がった。

「ニンジン!!」

ピロはよくわからない動きをして、わたしに何かを訴えてきた。

手をうねらせたり、足をバタバタさせたり。

美味しかったのか、美味しくなかったのか。

もしかしたら、ピロの体に何か異常が起きてしまったのかもしれない!

「ピロ!大丈夫!?」

わたしが慌てて背中を擦ってあげると、ピロはわたしに視線を合わせて、ニッコリ笑った。

「ニンジン」

ピロはそう言って、指で丸をつくってみせた。

そうなの?ニンジン気に入ったの?

「ニンジン美味しかった?」
「ニンジンオイシカッタ?」

ピロはいつもみたいに首を傾げたと思えば、すぐに首を立てて大きく手を叩いた。

「ニンジンオイシカッタ!」

嬉しそうなその笑顔が、また子供らしく見える。

──ピロピロピロリン

その時、お風呂が湧いた音楽が鳴った。

そういえばお風呂はどうしようか……

まず水の中に入るということ自体、ピロの身体に悪影響を及ぼさないのか。でも、それを聞こうと思っても、まだ聞けない。

一応入れてみようかな。

そんな考え事をしている間に、ピロのお皿の中は、ジャガイモと牛肉だけになっていた。