小さなお皿とスプーンとコップを用意して、キッチンに向かった。

キッチンには、シチューの残りが入っている鍋が置かれていて、それはまだ温かそうに湯気を立てていた。

わたしはお玉で少しだけ掬って、小さなお皿の中に注いだ。

それからコップに水を入れて、リビングのダイニングテーブルの上に並べた。

わたしは、いつもならおばあちゃんが座る椅子に、ピロを座らせた。

ピロは、目の前にあるビーフシチューを不思議そうに見つめている。

ピロの住む星のご飯ってどんなものなのかな。そもそも、食事をするっていう習慣はあるのかな。

「いただきます」

わからないことはたくさんあるけど、とにかくいただきますをした。

ピロは戸惑いながらも、両手を合わせて「いただきます」とわたしの真似をした。

そしてわたしは右手でスプーンを持った。

するとピロも真似してスプーンを持つ。

「あ、違う」

ピロは上からスプーンを掴むように持っていた。小さい子にありがちなやつだよね。

わたしは正しい持ち方に変えてあげて、覚えさせた。

ピロは何も知らないけど、頭がよくて覚えがいいため、なんでもすぐに身につけてしまう。

「……」
「あ、ごめん」

うっかりピロの頭のことに感心してしまい、ビーフシチューのことを忘れてしまっていた。

わたしは、中に浮かんでいるジャガイモを掬ってみせた。

するとピロも真似て、ジャガイモを上手に掬ってみせた。

そして口の中に運んでみせる。

ピロも真似する……

「ウァァアア!!」

ピロはいきなり大声を出して、その場に勢いよく立ち上がった。

「どうしたの」

なんだかその姿が面白くて笑ってしまった。

「ピロ、ヤダ!」

そう言って、ピロはまた椅子に座り直した。

ピロの口の中からは、湯気が出てきていて、とても熱かったんだなとわかった。

ジャガイモ、嫌いになっちゃったか……