「ちーちゃん、クッキー焼いたの、食べる?」
鼻腔をくすぐる、バニラビーンズのやさしい香りに気付いた瞬間、

わたしの心を見透かしたように
朝ちゃんが言った。


「食べる!」
0コンマ2秒の即答。
わたしは朝ちゃんの焼くクッキーが世界で二番目に好きだった。
ちなみに1番はお母さんが作る梅しそトンカツなんだけど。


群青色の縞柄の
クッキーにあまり似合わないお皿に
朝ちゃんがたくさんクッキーを盛ってくれた。

「いただきます」

朝食がわりにクッキーを頬張る。

朝ちゃんのクッキーはとにかく分厚い。

さっくり歯ごたえがあって、その分厚さゆえに時々は中が少し生っぽくて、生地の味がする時もある。

だけどそれもまたいいのだ。

卵と砂糖とバターのシンプルな優しい味で、延々と食べられる気がする。