待て。待てよ。俺は今、何を聞いたんだ。
 代償が無効になる?
 まさか、何年も苦しめ続けてきた代償がなくなる?



 姫巫女のジョークなのか?
 この後、急に笑い出して嘘だとか言わないか?



 そんなキャラじゃないのはわかっているけれど。簡単には信じられない。




「螺旋の終着点だ」




 姫巫女は咲良の大事にしているオイル時計を動かす。



 コロコロと螺旋の坂道をおりて、下に溜まっていくピンク色の液体。
 最後のそれが落ち切るまで、姫巫女は何も喋らなかった。



 やがて、座った俺を真っ直ぐに見下ろしてくる。
 機嫌が悪く、怒りを隠すことなく俺を睨みつけている。




「ワラワがお主らに負けたということ。螺旋は終わるのだ。雨宮亮の願いで一ノ瀬咲良は死を免れた。一ノ瀬咲良の願いで雨宮亮の代償は無効になった」




 信じられないと、姫巫女がぼやくように言う。