「その時の叫び声を隣の部屋で貴がたまたま聞いてて、その後は片手で口をふさがれて、あっという間に終わりました。と思いたい。」


「ど、どうして、それをすぐに言わなかったの。」


僕は愕然とする…。


理緒ちゃんがぎゅっと手に力を入れる。


「怖くて…こ、こわくて、みんな怖くて…先輩がとても遠くに感じて…。」


「人に私がされたことを相談しようとするとその時の気持ち悪い感情が、出てきて、死にたくなるんです。」


「怖くて、生きることも怖くて、外に出るのも嫌で、体が汚れてしまったように、悲しくて悲しくて苦しくて…」


「ぼ、僕の事も怖かったって事…?」


僕は力が抜けた…。


あの時どうして気がついて守ってあげられなかった。


一人で抱え込んでる君を…僕は力が抜けた…。


貴くんは当時のことはよく覚えていて、理緒ちゃんのために、無理やりな関係はどうなのかと必死に調べた。


あからさまにそれが性犯罪であると言う事を理解するのには時間がかからなかったそうだ。


今理緒ちゃんが打ち明けてくれた。


僕はあの時短期転勤で、3か月間石川県にいた。