その話を聞いていて、後悔した。


少しも笑わなかったのは…幸せじゃなかったからじゃないか。


笑えなかったんだ。


でも必死に家族という形を作り上げたかったんだ。


責任感という使命のせいで。


「先輩に…話したかったよ。けど話せなかった。一番先に相談したのは、弟でした。」


「貴くんに?驚かなかったかい?」


貴くんは理緒ちゃんの一つ違いの弟で…僕たちが付き合ってる頃はよくゲームの話で盛り上がったり、漫画の話で盛り上がったり、とてつもなく仲良しだった。


「貴には申し訳ないと思いました。まだ彼女もいないのに、こんな話聞かせて…。でも貴はすぐに理解してくれました。
『姉貴…、それ紛れもなく裏切りだよ。』
って。」


貴くんの歳でそこまで理解してるんだからすごいとも思ったけど…。


「それでもうまくいってたんでしょ?」


首を横に振る理緒ちゃんは話を続けた。


「私…高1の時、先輩がいないあの時、神村に襲われたんです。」


それを聞いて全身に衝撃が走る。


その日理緒ちゃんは、神村から想いを打ち明けられて、そのまま襲われてしまった。