あの頃の僕はすごく楽しかった。


理緒ちゃんがとっても愛しくて、片時も離れたいと思えなかった。


自然だった。


僕のココロが…素直でいられた。


あの時の公園のキスは他の誰でもない僕が理緒の初めてと聞いて、一層僕のココロを強くしていた。


キスだけでお互いの気持ちを分かりあえるってすごいと思った。


なぜあの時理緒ちゃんは神村を選んだんだろう。


そんなことを思い出してしまった自分を情けないと思いながら、僕は車を本屋の前に停めた。


テテテテテっと奏太くんが駆けてくる。


まだその足は走る事に慣れてないという感じで、おぼつかない。


「あっきー。」


まるで理緒ちゃんが駆けてくるように元気いっぱいの笑顔で、僕の胸に飛び込んで来た。


僕は奏太くんをしっかり抱き締める。いつか転んじゃうとハラハラさせられたけど一安心。


その後ろを晴夏ちゃんが追いかけるように走ってきて、


「奏太~走ったらダメだよぉ。」


と、お姉ちゃんらしく声を掛ける。


理緒ちゃんはうしろで軽くお辞儀した。


「さ、取りあえず乗ってくださいまし」