「怖くて動けなくて、工藤君が『晶則先輩のとこに逃げろっ。こっちはなんとかするからっ』って部室の外に押し出してくれて。」


「押し出すって…そんな。」

理緒ちゃんがうつむいた。


「神村先輩。小さいです。ココロが。押し出されるほどなんです。こないだも私の差し入れのコーラで喧嘩して、部室のガラス割っちゃって、鈴倉先生から謹慎受けてたのに。」


謹慎…。ガラス割るって…。

「ガラス割ったのか…。なんか成り行き見えてきたけど。結局発端は自分で、人から咎められるとキレちゃうのか…」


「…。」


「それじゃ正しいことを間違いだと周りが言えないじゃないか。」


「神村先輩は昔からああいう感じなんですか?」


理緒ちゃんが小さな声で僕に聞く。


「僕がいた頃は…」


後輩という建て前、静か振ってたのかもしれないな。


「僕が3年で、あいつがは1年の時は落ち着いてたよ。」


「はぁ…やっぱり」


「やっぱりって?」


「晶則先輩が卒業してから、荒れたそうです。私が入学するまで、今日みたいな喧嘩続いてて…」


「まぁ留年もしてるしなぁ、あいつ」