山形県米沢市内のビジネスホテル


遥香達は、いくつかの旧家を訪ねながら、山形県内を移動していたが、うつりの絵は見つからず、今夜は米沢市内のビジネスホテルで泊まることになった。

女の子の霊の存在が分かって以来、季世恵さんは教授と同じ部屋になり、遥香と忍はシングルに泊まっていた。

遥香はお風呂を上がるとベッドに座ってタオルで髪を拭いていた。

下を向いてタオルで頭を包むように拭いていると、視界の右端に女の子の足が見えた。

そのまま少し横を向くと、女の子が隣に座っていた。

遥香はまた髪の毛を拭き始めた。

拭き終わると、タオルを首に掛けて女の子を見た。

女の子はただ前を向いていた。

「どうかしたの?」

遥香は女の子の顔を少し覗き込んだ。

「ここにずっといるの?」

「え?ここ?このホテル?」

女の子は答えなかった。

「えっと、この町ってこと?」

女の子は頷いた。

「ずっとじゃないよ。いてもあと二日くらいかな」

「そう…」

女の子はすうっと消えた。

女の子はこっちを一度も見ないままだった。

それに、声が少し怖かった気がした。

「何だろ…いちゃだめなのかな?」

遥香は少し不安になって、着替えると、教授の部屋に行った。


教授は机でパソコンを見ていた様だった。

「季世恵さんは?」

「今、お風呂に入ってるが、どうした?」

教授が窓際のテーブル席に座る様に促した。

「さっき、あの子が出てきたんですけど」

「そうか。で、何か話したのか?」

遥香はさっきの会話を伝えた。


「何が言いたかったんでしょうか?」

「わからん。だが、この米沢市にいることが、良くないってことなのか…」

「何か、そんな感じを受けたんですよね」

「何だろな」

そこで、季世恵が風呂場から出てきたので、話はそれまでになった。

季世恵は頭を拭きながら、二人でどうぞとジェスチャーをした。