午後には宮城県御栗木町(おぐりきまち)役場に着いた。

教育委員会職員の吉田が対応してくれたが、ここでもうつり塚の起源についてはまるでわからなかった。

ただ、この町では、郷土史誌にも載せられていて、さらにうつり塚は首塚と認識されていた。

町外れにあるお寺にそれはあった。


「これです」

吉田が手で示した。

目の前にあったのは、ほぼお墓に近い形をしていた。

しかも結構新しかった。

「建て替えたのは10年くらい前ですかね」

一緒に立ち会っていた住職が言った。

まだ40代くらいだった。

「その前のがこれですね」

住職はアルバムを差し出した。

「ありがとうございます」

教授が受け取り見てみたが、その前からも似た様な物だった。

さらにその前は、ただ大きな石が置かれているだけだったようだ。


「これがうつり塚と呼ばれる様になった経緯はご存知ですか?」

教授は住職にアルバムを返しながら言った。

「私自身はここの住職を継いで日が浅いんですが、死んだ親父が言ってたのは、あ、前の住職ですけどね、首のことをうつりと言ったとかなんとかなんですけどね」

「え?この辺では首のことをうつりって言ってたんですか?」

「いや、自分自身では知りません。吉田さん、首をうつりって言う方言聞いたことある?」

「いやぁ、聞いたことないですね」

吉田は首を振った。

「そんな感じで、今となってははっきりしないんですけど、親父がそうじゃないかって言ってただけかもしれません。仮にそうだとしても、江戸時代のこの寺の配置図で、既にうつり塚となってましたから、かなり古いことなんでしょうね」

「そうなんですか」

そのやり取りを聞きながら、遥香は女の子を捜していた。

でも、女の子は現れなかった。

教授が遥香を見た。

遥香は軽く首を振った。

「わかりました。どうも忙しいところありがとうございました」

そう言って教授は頭を下げた。