「で、どうだ?何か感じるか?」

教授が横に並んだ遥香に小声で聞いた。

「いえ、何にも」

遥香もうつり塚を見てる振りして小声で答えた。

「女の子は?」

「向こうの方でこっちを見てますが、無反応ですね」

遥香はここへの入り口辺りを視線で示した。

「そっか」

教授と遥香は、忍達と話していた湯沢の方に戻った。

「中を覗いてみてもいいですか?」

「入るのはダメですが、見るだけならどうぞ」

「ありがとう」

教授は口元だけで微笑むと、その幅50cmくらいの階段を上り始めた。

遥香と忍、湯沢も上り始めたが、季世恵は下に独りで残った。

ここのうつり塚も入り口に木の格子柵がはめられていたが、奥行きはそんなになく、塚はすぐそこで、外からでも見る事ができた。

こんもりと盛り上がった土の上に小さな祠が載っていて、四隅に木の柱が立てられ、しめ縄で囲まれていた。

「同じだな」

「そうですね」

「女の子は?」

教授に聞かれて遥香が振り返ると、さっきのところにはいなかった。