岩手県奥見田町(おくみたまち)うつり塚


遥香達は、岩手県奥見田町にあるうつり塚に来ていた。

「ここも洞穴の中なんですね」

「そうだな」

遥香と教授がうつり塚を見上げた。

ここも、町外れの山の中で、鬱蒼とした森の崖の途中3mくらいの所にあり、そこまで小さな階段が作られていた。

中は上まで上がらないと見られない。

「確かに、塚と言いながら珍しいですよね」

ここまで案内してくれた奥見田町教育委員会職員湯沢が言った。

湯沢の話によると、奥見田町付近でうつり塚と呼ばれる物はここだけで、ここは町で管理してはいるが、代々、調査は禁止されているらしい。

郷土史誌にも何の記述もなかったが、あえて出さない様にとも申し送りされているらしい。

そんなうつり塚なので、なぜここにあると知ったのかと問われたが、教授は風の噂でとだけ答えて濁した。

「昔はこの近くにあったお寺が管理していたらしいんですが、大正の頃かそこらで廃寺になったそうで、それ以来町の管理だと聞いています」

湯沢がうつり塚を見上げながら言った。

教授が少し観察する振りをして、湯沢から離れて遥香を手招きした。