司法解剖の結果では、なんと頭蓋骨と身体は別人のもので、現時点でそれぞれの身元は判明していない。

しかも、身体の方の死亡推定時刻が発見された日の前日22時から26時の間、死後10時間程度に対して、頭蓋骨の方の死亡推定「時期」はほぼ15年から20年くらい前のものだった。

どちらも信じられないほど鋭利な刃物で切断されていたが、不思議なことに身体の方は、ほぼその血液が体内に残ったままだった。

何か薬品を使った訳でもなく、首の部分の血液だけが凝固して出血を止め、体内の方はまだ流動性が残っていた。

こんなことができるのか…と、誰もが思った。

仮にやるとすれば、首を切断した瞬間に血が出ない様に蓋をしたということか。

例えば薄い板状で幅のある刃物でそのまま首を切り落とした後、そのままにすれば蓋をしていることにはなるだろうが、首には動脈がある。

すぐに血が噴き出すし、身体を少しも動かない様に固定する必要がある。

それは実際には不可能なことだったし、遺体には、その痕跡が一切なかった。

それに首の周りはもちろん、どこからも血液反応がほとんど出なかったのだ。

本当は、身体の中の血液が固まるまで蓋をしていて、頭蓋骨に載せ替える行為も必要となるが、そんな時間があった訳もない。