世田谷西署 大会議室


「普通に帳場(捜査本部)が立ちましたね」

三田村が赤井に小声で囁いたが、赤井はそれには応えずブスッとしていた。

三田村が言ったのは、あんなモノを見たのにこれを『ただの殺人事件』にするのかという意味が込められている。

今回の事件では、警察官3名という目撃の証言がありながら、誰もそれを信用しなかった。

刑事課強行犯係長の大山は現場での生え抜きで、赤井とも長年の付き合いで、お互いの信頼感は強かった。

その大山でさえ、赤井が食いつく様に訴えても、さすがに、苦笑するしかなかった。

「何かクスリでも撒かれていて、3人で同じ幻覚をみたんだろ」

誰もが確証もなしに、そんなコトを言った。

ただ、鑑識が調べたこところで、そんな薬品の痕跡が検出されたわけではない。